『世の中捨てたもんじゃない(#^^#)!拾われた猫ちゃんの話』

今日は午前の診察が長引いて、休憩に入ったのが一時半だった。
看護師さんと二人で食事をしていると、さっき閉めたはずの玄関のドアホンが鳴った。
出てみると、17歳のななちゃん(シーズー)のお母さん(飼い主さま)だった。

ずっと調子の良かったななちゃんが、今朝から二時間おきでてんかん発作を起こしてるとのこと・・。その方は出先から帰宅するところだが、どうしたら良いか気持ちがまとまらなくて、お越しになったご様子だった。そこでどうしたいのかじっくりお聞きしてみると「半年ほど前に三途の川を渡りかけて復活してくれた子だけど、やっぱり無理はさせたくない。だから一旦このまま様子を見たい。」とのことだった。
それで、「了解です。だったら早く帰ってあげて!! 人間なんだから誰だって迷ったり気が変わったりすることあります。だから気が変わったらまたご連絡下さいね!」と言ってその方をお見送りした。
すると・・・30分もしないうちに電話が鳴った。
休憩に入ろうとしていた看護師さんに出てもらったところ・・・ななななんと~、ななちゃんのお母さんだと思いきや、初診の男性からだった。
「今、道路を見たら熱中症っぽい野良猫が横たわっていて、苦しそうだからこれから診て欲しい。」とのこと。

ここで、これを読んで下さっている飼い主さまにはがっくりされることかも知れないが、お伝えしたいことが一つある。 実は私達の仕事というのは、ONとOFFの切り替えが付きにくい仕事なのである。
盆休みだろうが日曜だろうが、重症の子を抱えた時は、よっぽど代わりの獣医に頼まない限り、遠出できない・・。急変したらすぐに駆け付けなくてはならないからだ。
それで子供達には、「さぁ、明日は思いっきり遊ぼうね~!!」と言って遠出して、着いた途端に泊まることもなくUターンして、我慢させたことが何度もある・・。
なので、申し訳ないのだが、午前と午後の診察の合間は電話をOFFにして、昼食後私は勉強道具を持って近くの喫茶店に出かけてしまうのである。

ところが、そんな電話を受けたのでお断りするわけにもいかず・・「ここは鍼灸専門の動物病院なので、お越し頂いた時に呼吸が止まりかけても、人工呼吸器がないのでそういう救急処置は出来ない」ことをお伝えして、ご納得頂けたので、診せて頂くことになった。

その方(Sさん)は、年の頃からすると25歳から20代後半
「猫アレルギー」とのことで、軍手をはめてその猫ちゃんを連れてこられた。
熱中症ではなかったが、意識もうろうとして横たわったままだった。
そして呼吸困難であり、手足の痛みの感覚も全くなくて、いつ亡くなってもおかしくない状況だった。
Sさんの家には犬が居て、ご自身が猫アレルギーと言うこともあり、連れて帰れないからしばらく預かってもらえないか?!とのことだったが、明日の水曜日は阿久比の病院で針を打つ日なのでお預かりできない旨をお伝えしたところ、ご了承して頂けたので、午後の診察が終わる7時過ぎにお迎えに来て頂くことになった。

ここでまた一般の飼い主さまからすると「根耳に水」の話だろうが・・・実は私は阿久比で開業して20年以上になるが、その間「お願いです!お金は後で絶対にお支払いしますので、この子を助けてやって下さい!」とお引き受けして、誠心誠意治療させて頂いたが、治った後で何人かの方に騙されてしまい・・総額100万円の未払い金があるのだ。その後催促させていただいたところ、そのうちの15万円は返ってきたが、残りは未だ返って来ない・・・。
これは当院に限ったことではなく、他の病院さんでもあることで、知多の獣医師会では『未払い悪徳飼い主さん情報』をファックスで回しているのである。

少し前の私であればこんなこと、絶対言えなかったと思うのだが、それは歳の功なのかSさんに「ごめんなさいね・・。実は20数年間、阿久比の病院で飼い主さまに何度か騙されたことがあって、少し人間不信になってるところがあるんです。お迎えに見えるまであなたを信じて治療させて頂きますので、絶対にお迎えに来て下さいね!」とお伝えした。それでお預かりしたのだが、Sさんが仕事に戻られるや否や・・、その猫ちゃんはいきなり激しいてんかん発作を起こし、七転八倒し始めた。しばらく様子をうかがったが、発作が落ち着く気配は全くなく、このままではこの子は衰弱するか、もしくは亡くなってしまうと判断して、抗てんかん薬を注射したところ、発作はすっかり治まった。
が、二時間ほどして小さな発作が起きたので「今度生まれ変わったら、ちゃんとしたお家の猫ちゃんになって、新しい飼い主さんにたんと可愛がってもらうんだよ!」とドライアイ用の目薬をさしながら話しかけてる時に、私の手の中で亡くなってしまった・・。

直ぐにSさんに連絡したが、繋がらず・・ご遺体の処置(※後述)をしていたところ、お電話が掛かってきたので、事情をご説明したところ、Sさんの声がいきなり止まり、ショックとも受け取れるような沈黙が続いた。それで私も「お役に立てなくて申し訳ありませんでした。」とつい涙が出てしまった。
「何年やっても、命を預かるこの仕事って、ホント辛いな~・・。」と思いつつ、Sさんをお待ちした。
Sさんは、息の止まった猫ちゃんの亡骸を見て、思わず男泣きされ・・私もつられて泣いてしまった。
そして「あ~・・世の中にはこんな優しい人もいるんだな~・・・!!」と感激した。
因みにさきほどSさんが預けてお帰りになった後で、奥様からお電話があり、内容はその猫ちゃんを連れて帰るにあたっての質問であった。小さいお子様がいらっしゃるので少し心配なところがあったようだった。それで「私の経験からすると、ご主人がお迎えに来られた時に生きてお返しできたとしても、明朝まで持つ可能性は低い。」ことをお伝えして、電話を切った。
もしかしたら、拾った猫ちゃんを奥様の相談もなく勝手に連れて帰ることになって、少し揉めたかも知れないが、こうやって奥様からお電話を頂き・・「このお二人に育てられたお子さんは、きっと心優しくて自己肯定のできる素敵な大人になるだろう!」と、妙な確信を持った私であった(笑)。

ご遺体の処置をしながら、猫ちゃんの少しふくれたおっぱいを見て、「おそらくこの春にもお母さんになったんだろうな~・・。その子供たちは今どうしてるんだろう・・。この子はお腹が空いたりして、いろいろ大変なことがあったんだろうな~・・。」などと考えていた。

が、「たった数十分のおつきあい。それも頭すらなでたこともない・・。辛そうだから抱こうとしたら逃げてしまったこの猫ちゃんを連れて来て下さり、ご自身のお小遣いをはたいて治療費を出してくれ・・・そんなSさんからこんなに泣いてもらったこの子の最後は、本当に幸せだったな~・・。」としみじみ思った。
「まだまだ世の中捨てたもんじゃないな~(*´▽`*)~!!」と思った一日だった。
猫ちゃん、Sさん、そしてSさんの奥さま、今日も気づきをありがとうございました。
猫ちゃんは、発作もなくなり身体も楽になって、今頃は身体から出た魂がSさんのお家の天井から自分とSさん達を観ていることだと思います。そしてきっといいところに行くことでしょう~・・。 それでは今日はこの辺で~・・。

※ご遺体の処置とは・・猫ちゃんに限らずどの動物も亡くなった後で、お口やお尻などの穴から体にたまっていた液がどぼ~っとこぼれることがあるのです。その為に穴という穴に丸めた脱脂綿を思いっきり詰め込んで、液がこぼれないようにする処置のことです。


IMG_3721お預かりした直後に、もの凄い音がしたので、犬舎を覗きに行くと、犬舎の隅から隅まで身体をぶつける程の激しいてんかん発作を起こしていた。

抗てんかん薬を注射したところ、一旦落ち着いた。

これは最後に私の腕の中で亡くなる直前の写真である。


耳の皮膚炎のチェック

Iさんちの、猫ちゃん達。

7年前に、コンビニでご主人が捨て猫ちゃんに一目惚れして、奥さまを説得してお家に連れて帰りました。

その後、トントン拍子に二頭も仲間入りして、大賑わいです。

今日はお耳の皮膚炎のチェックに来てくれました。

楽しそうだけど、奥さまは毎日一頭ずつお耳に薬を入れるのが大変(>人<;)!!との事でした。確かに大変そうですね(๑˃̵ᴗ˂̵)!!

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